手の内にあるときはそれがアタリマエだと思っていて,なくなった瞬間から後悔し,再び手に入れようと求め始める。
そのみっともなさに自己嫌悪におちいる。次の瞬間,それでも欲しがる自分に遭遇する。
そのジレンマに身悶え,また自己嫌悪におちいる。感情の環状線は走り続ける。
こうなることが分かっているなら,その手を離れる前にもがけばいいのに。
しかし,手を離れる前だと思って気づいたその瞬間から手を離れ始めるということに自分では気づかない。
手に入れ,手放し,後悔する。こんなことが生きている限りずっと続いていくのだろう。
でも,俺は手に入れて生活に変化を与えることをやめようとはしない。
俺はわがままだし,なにより変化のない人生なんてつまらないから。